評論家 吉田 秀和
人に知られた美術館や博物館は宝の山で、見るべきものは、無数にある。そういうところにいって、やみくもに端から端までみて廻るのは愚の骨頂。あとで、これをみた? あれをみた? といわれても、はっきり思い出せず、残ったものは疲れだけ。実は私もそうでした。
そのうちやっと気がついたのは、行く前に手引書で調べて、本当に見たいものを選び、それを中心にしっかり眺めること。たくさんの名作から、一、ニ点じっくりみる経験を重ねるうち、いつか自分の頭と旨に残る作品が溜まってきて、目をつむっても見えるようになる。そのあとでもう一度本をみると、名画が自分の心の友になっているのに気がつきます。その楽しさ、うれしさ!
人生と同じで、美術館めぐりがしたいなら、自分に適した手引書にめぐりあえたかどうかは決定的に大切なことなのです。